「争いの根っこにあるもの」

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「争いの根っこにあるもの」

チャプレン室 田中 歩美

争いの根っこにあるものは何でしょうか?

「他者を大切にする愛を失い、自分を1番とする自己中心が根っこにある」と答える方も多いと思います。

もう少し掘り下げて考えてみると、人は一人だけで生きられる者ではなく、誰かの助けを必要とする者です。

しかし私達は、そのことをほとんど自覚できていない、ということも大きな課題ではないでしょうか。

私自身を振り返って見た時も、やはりそうではないかと痛感します。

 

聖書には、「兄弟愛をもって互いに愛し合い、互いに相手をすぐれた者として尊敬し合いなさい。」(聖書 ローマ人への手紙12章10節)と教えています。

私達はこの世界に誕生した時、親の手を、もしくは自分を助けてくれる人の手を借りずに、生きることはできなかったはずです。

自分一人では自分の必要全てを満たすことができず、いくつになっても、誰かの助けを必要としているのが、私達ではないでしょうか。

 

聖書では、私達を一つの体として表現している箇所があります。

私達は、姿や形、性格や持っている能力は違うように、体の器官も多種多様で、それ一つでは存在することができず、全ての器官によって、一人の体は生かされているのです。

ですから聖書は、「あなたの周りにいる人達は、誰かの助けを必要としている人達ですよ。ですから、あなたも周りの人達を助ける者でありなさい。」と教えているのです。

そして、私達は助けることを通して、また周囲から助けてもらうことを通して、「生かされている」ということを実感していきます。

また、私を生かすために、そこにいてくれる人は、私にとってかけがえのない人、優れた人、と言うことができるでしょう。

 

冒頭に質問した争いの根っことは、相手を切り捨てようとする思い、相手が自分にとって必要のない存在だという思いがある、と言って良いのではないでしょうか。

ですから私達は、自分は助けを必要とする存在であると知り、周囲の人達を必要としている存在であると知って、素直に助けを求めていける者でありたいと思います。