こころのサプリメント「愛する者のために」

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こころのサプリメント「愛する者のために」

チャプレン室 田中 歩美

皆さんはそれぞれに愛する人がいると思います。

親や兄弟、子ども、孫、友人、つながりをもつ様々な方々。

大切であればあるほど、その人が痛みを抱えていれば自分のことのように痛みを覚えますし、その人が幸せに過ごすことができるように願っていきます。

 

聖書に登場する、ヤコブという人も同じでした。

彼には12人の息子と1人の娘がいました。

彼は、子ども達と妻達を連れて、長らく離れていた故郷に戻ります。

そこへ、ヤコブの双子の兄が弟に会いに、大勢の仲間を連れて向かってきたのです。

ヤコブが故郷を離れていたのは、兄に恨まれて命を狙われていたことが理由だったため、兄が会いに来ると聞いて、ヤコブは不安に襲われました。

 

兄はヤコブより強く、また共に行動する仲間も屈強な人たちです。

対して、ヤコブは小さな子どもたちと妻達だけで、いざ戦いになれば、あっという間に滅ぼされてしまいます。

ヤコブは大切な人を守る力も、助ける力もなかったのです。

絶望的ともいえる状況の中で、ヤコブがしたことは神様に祈り、頼ることでした。

ヤコブの神様に対する強い祈りが、聖書では神様と格闘する場面として出てきます。

当然ながら神様の方が強いのですが、ヤコブは食い下がりました。

この強い思いに、神様の心が動かされたのです。

神様はヤコブに対して、

「あなたは神と戦い、人と戦って、勝ったからだ。」(創世記32章28節)

とおっしゃり、ヤコブを祝福しました。

その後、ヤコブは兄と和解することができ、家族の命が守られたのです。

 

神様がヤコブに負けてくださったのは、ヤコブを我が子として愛する、優しい親の心をもっているからです。

そしてその親の心は、ヤコブだけでなく、私達一人一人も同じようにもってくださっています。

 

私達は、愛する人を守りたいけれど守ることができない、大切な人を助けたいけれど自分の力ではどうすることもできない、そのような時があるかもしれません。

その時にまことの親である神様に助けを祈り求めていくことで、神様は私達の強い思いに対しても、心を動かしてくださいます。