こころのサプリメント「名前以上に自分らしく価値ある存在」
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こころのサプリメント「名前以上に自分らしく価値ある存在」
チャプレン室 瑞慶山 真
あの人の名前には、どんな願いが込められているんだろう。
自分の名前の意味は何だろう。自分はいったい何者なのか。
そのようなことを考えたことはありますか。
自分の名前が嫌いな頃の私は、考えもしなければ、知ろうともしませんでした。
ですから「名前はどうやって書くの」と聞かれれば、いつも適当に答えていました。
名前に使われる言葉にはそれぞれ意味があります。でも言葉の意味以上に名前に込められた親の願い、祈りを知ることはもっと大切だと思います。
そのことに気づかされ、子どもには名前の意味や込められた思いを伝えるようになりました。
イエス・キリストの弟子の一人に、アルパヨという人の息子でレビ(マタイ)という名前の男が登場します。
レビという名前には、「協力し合う」、「仲をとりもつ」という意味があります。
神様と人々の仲立ちとなるようにと選ばれた一族を、レビ族と呼んでいましたから、きっとレビの両親も、我が子も神を思い、人々の助けとなるよう育って欲しいと、願いと祈りを込めていたのかもしれません。
でも、どこで道を間違えたのでしょう。
大人になった彼は、同胞のユダヤ人たちから嫌われながら生活を送る取税人となっていました。
その頃、ローマ帝国がユダヤの国を支配していました。
ローマは、ユダヤに兵を置き、税を課して、力でユダヤを押さえつけていました。
そして民衆の不満や怒りがローマに向かわないように、税の取り立ては、ユダヤ人の中から選んでいたのです。
取税人となった者は、祖国を売った裏切り者、罪深い者とみなされ、ユダヤ人でありながらユダヤ人社会の中で生きていくことが出来ませんでした。
レビが自分から取税人の道を望んだのか、それ以外の道が選べないほど追い詰められたかは分かりませんが、レビという名前の意味、名前に込められた思いや祈りからは、かけ離れた生活をしていたのは間違いなかったようです。
ローマ人ではない。かといってユダヤ人としても生きていない。自分とは一体何者なのか。きっとレビの中にはそのような思いが渦巻き、彼の心を責め立てていたのかもしれません。
あるとき「イエス様が来られた」と喜び迎える声が聞こえると、その声は人伝えに広がりました。
でも、レビの姿はそこにはありません。取税人という立場、力を振るうことでしか、関係を築けなかったレビを、友と呼んで近づく人、仲間として迎え入れ、声をかける人は一人もいなかったのです。
たちまちイエス・キリストの周りには人々が集まってきたのとは対照的に、レビは収税所に座ったままでいました。
イエス様はそのレビに目を留めたのです。それから彼のいる所に近づき「わたしについて来なさい」とお語りになりました。
同胞たちからはかけられることの無かった一言が、いま目の前にいるイエス様から。
イエス様の「私と一緒に来ないのか」と言って下さった言葉を、レビはそのまま受け止めました。
聖書は「何もかも捨て、立ち上がってイエス様に従った」とそのときのレビの様子を書いています。
イエス・キリストは、レビを本来あるべき神の子レビの姿に回復するため目を留め、声をかけられたのです。
この出会いをきっかけに、バラバラだったレビの人間関係は回復へと向かいます。レビはその名の通り、父なる神様を思い多くの人々の助けとなる者となりました。
マタイとも呼ばれたレビの仲立ちとしての働きは、新約聖書の最初にあるマタイによる福音書として残されました。
レビは、自分と同じように「自分は何者なのか」と答えを探し求めている人に、あなたは神の子です。あなたを本来あるべき神の子の姿に回復させて下さるお方が、イエス・キリストですと伝えているのです。
一人にひとつ名前があるように、一度きりの人生という物語も一人にひとつです。
物語は、ときには望んでない、思わぬ方向へ進んで行くこともあります。
でも、それは神様の物語(ご計画)の中で、私が神様と出会うために備えられた道なのかもしれません。
その道について聖書は、必ず祝福へとたどり着く約束された道だと教えています。
神様の側の物語の中に登場する者は、誰もが尊い価値ある存在だからです。
神様は、私たち一人ひとりのために捧げられた、多くの願いと祈りを全てご存知のお方ですから、もっとも私らしい生き方へと導くことが出来るお方です。
あのレビがそうだったように。
この後、イエスは出て行き、収税所にすわっているレビという取税人に目を留めて、「わたしについて来なさい」と言われた。するとレビは、何もかも捨て、立ち上がってイエスに従った。
ルカ福音書5章27、28節
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