「うりずんの風吹くころ」

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「うりずんの風吹くころ」

チャプレン室 瑞慶山 真

3月は旅立ち、4月は新しい出会いの季節。

若者たちのなかには、故郷を離れて新しい生活を始める人もいるでしょう。ここ最近、十八歳から大人の仲間入りと言われるようになりました。

ですが一人前と呼ぶには早いのかもしれないと考えるのは私だけでしょうか。

 

「白い煙黒い煙」の物語をご存じでしょうか。田舎の貧しい村に、年寄りの両親と娘が暮らしていました。娘は成長し、学校を卒業すると本土に就職を決めました。高齢の両親や働いた経験のない娘の稼ぎでは、暮らしを支えていくことが難しい時代だったのです。

出発の日を迎えました。両親は自分たちが一緒では、出港時刻に間に合わないからと「お前の乗る船が名護を通る時には、ちゃんと見ているからね」と言って娘を送り出すと、すぐに名護城(なんぐしく)へ向かいました。

海が見渡せる高台につき、休む間もなく、島の影の空にあがる黒い煙を見つけたのを合図に、両親はくる途中で拾い集めた枝を燃やし始めたのです。

「あの船に愛しい我が子がいる。どうか旅の安全が守られますように。」と両親は願いを込めて祈ります。船の上では遠ざかる故郷をしっかりと目に焼き付けていた娘が、名護城から上がる白い煙に気づきました。

「父さん、母さん行ってきます。どうかお元気で」と祈り旅立ったのでした。

今も名護城には歌碑があり、沖縄民謡(別れの煙)としても歌われています。

 

『 別てぃ旅行かば 嬉さ寂しさも 覚出せよ産子 島の事も ちゃー忘るなよ 』

(沖縄民謡 別れの煙より)

親元を離れ旅立つなら、行く先々いろんな事があなたを待っているでしょう。でも、嬉しいことも寂しいことも思い出しなさい。お前が嬉しい時、父さん母さんも一緒になって喜んだでしょう。 お前が寂しい時には、いつも慰め、励ましていた事を思い出してごらん。お前は一人じゃないからね。いつもお前の側にいるよ。愛しい我が子よ、故郷をいつも忘れるんじゃないよ。

と歌っているんですね。

 

『あなたのみ言葉はわが足のともしび、わが道の光です。』

                   (詩篇119篇105節)

足元に眩しいほどの強い光では、かえって足元が見えなくなり危険です。

行く先を示す光が進むにつれて届かなくなっては道を誤るかもしれません。

しっかりと心に蓄えられた愛、それを伝えるために届けられたことばは、新しいスタートを始めた人の大きな支えになるのだと思います。いつも心に注がれているのは、生み育ててくれた親の愛であり、たましいの親である神様の愛だと私は信じています。若者たちそれぞれの成長を応援します。