こころのサプリメント「救いを届けられる人になりたい」

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こころのサプリメント「救いを届けられる人になりたい」

チャプレン室 金 知明(キム ジミョン)

幼い頃、兄弟や近所の子どもと一緒に外でよく遊びました。辺りが暗くなり「もうご飯だから帰っておいで」という母の声に、渋々家に帰ったことを思い出します。当時はスポーツといえば野球が人気で、テレビで活躍している野球選手がカッコよく見えたものです。小学校高学年頃には硬いボール、グローブやバットなど本格的な道具を買ってもらいました。テレビで見たいろんな選手を真似ながら、自分たちなりに研究しました。

 

そんな中いつものように野球で盛り上がっていると、打球が近くに止まっている車に当たってしまいました。「パリーン!」という音とともに、車のサイドミラーが割れて破片が道路に飛び散っていました。子どもたちはみんな言葉を失いました。「何が起きた?」「どうしよう」「怒られるよ」不安と心配で今にも泣き出しそうになっている子もいます。その時、一番年上の子が「誰の車かなあ」「謝りに行こう」と言ったのです。一人じゃ心細いけれどみんな一緒なら大丈夫だと、辺りの家を一軒ずつ回りました。

 

1軒、2軒と車の持ち主を探しながら3軒目の家のチャイムを押すと、家の中から女性が出てきました。事情を説明すると、この車の持ち主であることが分かりました。私たちはみんなで謝りました。すると女性は驚いた表情で「そうなの?!大丈夫なの?!」と言いました。子どもたちはみんな怒られることを覚悟しました。しかし、女性は続けて「怪我はなかった?」「謝りに来てくれてありがとう」と言ったのです。そのまま逃げるのではなく、謝りに来たことを褒められたのです。その瞬間、その場にいた子どもみんなが、怒られる恐怖から解放される経験をしました。私も心の中で「よかったあ~」と安心しました。それはまさに、心が救われる経験でした。

 

私たちは思わずやってしまったこと、起きてしまったことに不安や恐れを抱きます。そんな時、誰かのことばや行いで心が救われることがあります。ゆるしは罪を覆う愛を伝え、生きる喜びを与えてくれます。自分への見返りや利益よりも、誰かを心から大切に思う気持ちは私たちにとって大事なことです。私たちの目に見えないところ、思いもよらないところで私たちのことを愛し、励まし、助け、支えてくださるたくさんの方々、そして神様の大きな愛に生かされて、誰かの心に救いを届けられる人になりたいと思う毎日です。