こころのサプリメント「私(も)大好き」
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こころのサプリメント「私(も)大好き」
チャプレン室 瑞慶山 真
先日、院内の図書室に足を運ぶと一冊の本が目にとまりました。
それは以前、勤めていた職場で出会ったY様との思い出の絵本でした。
ある日そのYさんに差し入れで、ご家族から一冊の絵本が届けられたのです。
「ご家族からのプレゼントですよ」と彼女に手渡すと、繰り返し読まれる声の調子やその姿からうれしい気持ちが伝わってきました。
不思議に感じたのは、絵本を読み進めながら、どのページにも必ず出て来る一つの言葉だけ「ワタシ ダイコウキ」と漢字を音読みされていたのです。
私や他のスタッフが隣りに腰かけると、小柄な彼女はこちら側に少し体を預けるように軽く首を傾け、まるでご自分のお子さん、お孫さんに語り掛けるよう声に出して何度も読み聞かせをして下さいました。
その様子をじっと見ている私に気がつくと、ニッコリ微笑んだり、照れて私の膝をつねるのでした。
しばらく経つと、絵本はボロボロに。破れて見つからないページもありましたが、それでも手に取り読み続けていました。
彼女にとって大切な贈り物、お気に入りの一冊だったのでしょう。
Yさんとお別れをした日も、出会ったときと変わらない素敵な笑顔でした。
ご家族に破れた絵本をお返ししながら、大切に預かることが出来なかったことをお詫びすると、ご家族は「母が気に入って手に取ってくれた証拠ですから」と仰って下さいました。
あれから数年が経ちましたが、そういう事があったので、図書室で「私大好き」と書かれた背表紙を目にした瞬間「あの人が大切にしていたのと同じ絵本だ」と手に取っていたのです。
懐かしさがこみ上げて、物語と彼女の声と当時の思い出が重なります。
一つめくっては、「私も」、そして「ありがとう」と心の中で声を繰り返し、胸の奥が温かくなりました。
11月11日は、介護の日ですね。
長い間、介護の仕事に携わってきた私自身、多くの方々と「ありがとう」を分かち合ってきたことを思い出します。
介護に携わる者というだけでなく、人としても成長させて下さった方々のおかげで今の私がいます。
そして沢山の出会いを用意して下さった神様、天のお父様ありがとうございます。
11月11日、「いい日、いい日」と覚えやすい響きもいいですね。
神様がつくってくださる新しい一日は、どれもいい日。
そして出会いを用意してくださった今日は、とても良い日。
そう心に留め、これからも「ありがとう」を分かち合っていきたいと思います。
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